こんにちは。
施設基準管理士のカジハヤトです。
新型コロナの第8波に備え、オンライン診療の拡充が求められています。
私の勤務する病院は精神科病院ですが、第7波ではスタッフも感染し外来診療を中止せざるを得ませんでした。
その教訓からオンライン診療の導入も視野に入れているところです。
そもそも、オンライン診療では感染しませんからね。
とは言え、そもそも精神科においてオンライン診療は成り立つのでしょうか?
令和2年10月28日に日本精神科病院協会(以下、日精協)から「オンライン診療に対する日本精神科病院協会の見解」が厚生労働大臣宛に要望書を提出しました。
この中で、いくつかの問題点が指摘されています。
今回はこの要望書をかみ砕き、精神科でのオンライン診療について読み解いてみようと思います。
この記事は精神科を標ぼうする医療機関で、オンライン診療の導入を考えている方にオススメの記事です。
目次
精神科でオンライン診療は成立するのか?日本精神科病院協会の要望書より読み解くいてみる。
日精協の「オンライン診療に対する日本精神科病院協会の見解」を読み解くと、オンライン診療(精神科)に対して一定の理解を示しながらも、慎重に検討しないと利用者の不利益に繋がると、問題点を指摘しています。
その問題点が以下の6つです。
- 有効性の側面
- 安全性の側面
- 秘匿性の側面
- 向精神薬の側面
- 商業主義的医師の側面
- 自立支援医療(精神通院医療)の側面
以下、私なりにかみ砕いて簡単に説明していきます。
①有効性の側面
まずは有効性です。
これは、PCやスマホの画面越しの診療では得られる情報が少なく、正確な診断ができないということです。
もちろん、実施不可能な検査等もあります。
確かに、現状では微妙な表情の変化、服装、姿勢、自傷行為の跡などの情報は得にくいと思われます。
②安全性の側面
PCやスマホの画面越しの診療では状態の変化に気付きにくく、症状を見逃してしまう危険性を指摘しています。
もちろん、このことは希死念慮の強い患者さんにおいては重篤な結果をもたらす可能性もあります。
また「なりすまし受診」の可能性も指摘しています。
さらに、このことは処方箋目的(薬の売却目的)の受診につながる可能性もあると警鐘を鳴らしています。
③秘匿性の側面
プライバシーの確保はもちろんのこと、医師ー患者間の治療関係の中での告白は秘匿される必要があります。
通信回線からの情報漏洩する可能性があるの問題点の一つでしょう。
また、ここでは家族以外の第三者と面接する場合にもついても触れています。
オンラインでその人と患者さんの関係を確認し、利害関係なども考慮するのは困難ではないでしょうか。
精神科において患者さん以外の第三者の意見は
とても重要です。
④向精神薬の側面
現状、オンライン診療では向精神薬の処方はできないことになっています。
なのに、検討会の資料では使用している例があるそうです。
初診で処方件数は23種88件とのこと。
これは問題だろ?と指摘しています。
さらに、このことは依存症・売買目的、しいては社会的問題に繋がる恐れがあると警鐘をならしています。
⑤商業主義的医師の側面
オンライン診療の拡充が精神疾患の患者の弱みつけこんだ商業主義的行為の蔓延の助長に繋がるのではないかと問題視しています。
育毛・発毛ビジネスをイメージするといいと思います。
⑥自立支援医療(精神通院医療)の側面
最後は自立支援医療(精神通院医療)です。
自立支援医療は通院による精神医療を続ける必要がある方の医療費を軽減する仕組みです。
このオンライン診療において自立支援医療は現状、事務手続きが示されていません。
不備により患者さんに自己負担額が発生することを問題視しています。
まとめ
オンライン診療(精神科)の問題点について「オンライン診療に対する日本精神科病院協会の見解」をかみ砕いてみました。
以下の6つの問題点が指摘されています。
- 有効性の側面
- 安全性の側面
- 秘匿性の側面
- 向精神薬の側面
- 商業主義的医師の側面
- 自立支援医療(精神通院医療)の側面
最後に私の考える問題点を挙げておきます。
オンライン診療では日本全国どこからでも診療が可能となります。
遠隔地の患者さんを診療した場合、もしその患者さんが病状が悪化した場合の対応を懸念しています。
すぐに、診察に来てくださいとは言えませんよね?
「医療圏以外の患者さんはオンライン診療しない」などのルールも定めなければならないのではないでしょうか?
解決していく必要のある問題点が多いなとの印象です。
今回は以上となります。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。